20日からインドで開幕したAFC女子アジアカップ2022。グループステージ2試合を終了し、残すは1試合となった。なでしこジャパンは、初戦のミャンマー、第2戦のベトナムに完勝し、勝ち点6を積み上げ、同勝ち点の韓国に得失点差を「3」上回り首位に立っている。
すでにベスト8進出は決めているものの、大会三連覇を目指すにあたって、カギは次の3戦目となる。グループ1位抜けの場合はグループA/Bの3位(イラン/フィリピン)、2位抜けの場合はグループBの首位、つまり優勝候補・オーストラリアと対戦する可能性が高いのだ(順位は第2節終了時)。
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そんななでしこジャパンが迎える第3節、対するは韓国となる。2019年のE-1サッカー女子選手権以来となる「日韓戦」であることに加え、ともに目指すのはアジアの頂点だ。
そこでGOAL Japanでは、現在、WKリーグ(韓国女子サッカーリーグ)慶州水力原子力女子蹴球団で活躍する、元なでしこジャパン・田中明日菜に話を聞いた。WKリーグ5年目を迎える田中だからこそ知り得る韓国女子サッカー、そしてそこでプレーする自身の現在地とは?
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■韓国の女子サッカーリーグについて
韓国の女子リーグ・WKリーグは、1部のみ、8クラブで構成されている。1年間で7試合を4周、全28節を行う。2020、21年シーズンはコロナの影響で3周・21試合となったものの「試合、多くて楽しいですよ」と田中も語る。
選手の契約に関しては、「プロはプロなんですが、基本2年の会社員契約です」と田中。「チームを持っている多くは企業で、あとは軍隊や市。選手たちは仕事をしなくていいんです。全チームの選手がサッカーだけやっています」
移籍も盛んだという。
「契約が終わるあたりになると、選手にオファーの声が届きます。時に移籍金も発生します。仕組みはアメリカのNSWLに近い形で動きます」
「新人が入ってくる時は、ドラフト制。(WKリーグの)すぐ下のカテゴリーは大学生で、大学を卒業してからじゃないと、トップリーグでプロになれないんです。女子サッカーチームを持つ大学は10ぐらいしかなくて、大学リーグで活躍してドラフトにかけられた人だけがプロになれるんです。女子サッカー人口は少ないものの、チーム数がかなり限られているので、結構狭き門なんです」
しかし、女子サッカー選手としての環境は日本よりも恵まれているのではないかと言う。
「(WKリーグに入るような)活躍してきた選手にとっては、サッカーをする環境が常にあるのが当たり前です。年棒も日本より高いと思います。もちろん選手によって違いますが、どこもインセンティブが付いて、勝利給はもちろん、全寮制で食事も三食出てお金もかからないですし」
チーム数は少なくとも、試合数の充実、衣食住の待遇は、サッカーに集中できる環境が日本より整っていると話す韓国女子サッカーリーグ。では田中はなぜこの地でプレーしているのか。
■取り戻した、サッカーへの自信
田中は、2011年ドイツ女子W杯、2012年ロンドン五輪、2015年カナダW杯をなでしこジャパンの若手メンバーとして、レジェンドたちと栄光をたどった選手だ。世代交代を考えると、次世代のなでしこジャパンを引っ張っていくのは彼女だろうと思われた。しかし、2016年、佐々木則夫氏から高倉麻子氏へ監督交代が行われたタイミングで代表から遠ざかった。
「2016年頃、INAC(神戸レオネッサ)で試合に出場して結果も残していました。絶対代表に呼ばれるぞと(東京五輪へ向けて)気合入れてサッカーと向き合っていました。でも、パタっと呼んでもらえなくなって…。あきらめず『いつかは呼ばれるように』と思って努力はしていたんですが。次第になぜ呼ばれないのか? と投げやりになって。サッカーが嫌いになりそうな時期があったんです」
「それから徐々にパフォーマンスが落ちて、2017年頃には、INACでも結果が出なくなってしまった。そんな時、ちょうど韓国オールスター対INACの親善試合があって、久々の出場でたまたまゴールを決めたんですよ。それを見てくれた韓国リーグの監督さんが私にオファーをしてくれました」
どうにかして自分を変えたかった田中はこのオファーを受け入れる。
「環境を変えることによって、何かが生まれるんじゃないか? と思いました。一回代表のことは忘れて、とにかく新しい刺激を得るために。そんな思いで移籍を決めました」
依然代表から遠ざかってはいるが田中は「本当に韓国に来て良かった」と断言する。
「フィジカル面では韓国のほうが上だけれど、技術面では日本人のほうが上。その違いが面白くて、その点で自分はチームに違いを生み出せていると思うんです。その特長の違いが、失った(サッカーへの)自信を取り戻してくれました」
「サッカーが楽しい、楽しめている自分がいる。それが選手にとって、一番大事なことだと思います」
いるべき場所だったかもしれないなでしこジャパン。でも今彼女は、オンリーワンのプレーヤーとして、異国でサッカーと改めて向き合い、成長し続けている。田中は、27日の「日韓戦も楽しみ」だと語る。約3年振りの女子の日韓戦はキックオフは17:00(日本時間)DAZNで独占配信される。
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